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草木あそび 10月

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お盆前になると、家の裏の土手を見て、
「カヤが育ちすぎているから、草刈りしなければ」と年老いた母は心配する。

カヤとは、ススキのこと。
敷地にススキが伸び放題になっていることは、
手入れが行き届いていないということ、近隣に見られて恥ずかしい・・・と思うらしい。

山のすすき

ススキを、雑草として見ているということですよね。

雑草って何と思うことがありませんか。
植物は皆ちゃんと名前をもらっているのに、
雑草と一括りではなんだかねぇ。

ヒメジオン、タンポポ、ドクダミ、ミズヒキ・・みんなかわいい花を咲かせるよ。
でも、私の庭では、時々雑草。

名もない植物が雑草というわけでもなさそう。

名もないというより、名前が知られていない植物かな?
人目に目立たない植物ということかな?

いやいや、2mにも成長するススキは、目立つし、
その名前はだれもが知っている。
でも雑草と思われている。

私はこう考えます。
雑草とは、育ってほしくない場所に、ほしくない時期に、
目だって生えてくる植物のことと考えます。

つまり、見る側の気持ちで雑草になったり、ならなかったりするのだと。

さて、奈良県に曽爾(そに)高原というところがあると聞きます。
奈良県から三重県にまたがる倶留尊(くろそ)山のふもと、
奈良県宇陀郡曽爾村にある、標高730mの高原だそうです。

私は、まだ行ったことがありません。
新聞の記事で見ました。
およそ40ヘクタールの高原が一面ススキで覆われるのだそうです。
初秋から11月中旬まで金色に輝くススキの穂の草原を楽しめるとか。
そしてススキが枯れはてた3月初旬には、山焼きが行われるそうです。
この広さですから、その炎と煙は、すごい迫力だそうです。
山焼きは、他の草木の生育を抑え、ススキだけを生育させるためだそうです。
現在は、住民で作られる高原を守る会の皆さんによって、
山焼きが行われているのだそうです。
古くからの仕事のやり方と、その風景を残そうとしているそうです。

昔、ススキが大切に育てられていたのは、それが家づくりの大切な材料だったからです。
いわゆる、茅葺屋根の材料がススキです。

屋根をふく材料とされる草が、カヤと呼ばれてきたそうです。
ススキだけではなく、
他にイネ科の植物のチガヤ、ヨシ、
カヤツリグサ科のスゲなども、カヤと呼ばれます。
イネやムギの藁は水分を吸いやすく、屋根をふく材料には不向きですが、
カヤは油分を含むので水をはじくことで屋根をふくのに適しているそうです。

このようにススキはカヤとして昔はなくてはならない植物でした。
ススキはその他、家畜の飼料、田畑の肥料、または燃料としても用いられたのです。
まさに、日本の代表的な有用植物だったのです。

もうずいぶんと昔に、茅葺屋根はトタン屋根にとってかわられ、
燃料は石油に、飼肥料は化成肥料に変わり、
ススキは、もはや雑草扱いされるようなってしまったわけです。

さてさてそんなススキですが、人は、その姿に今もちゃんと愛着があるようです。

ススキの穂

秋のお月見の夜に飾るススキは、現代もなくてはならない風物詩。

平安時代の貴族は月を愛でながら酒を飲んだり、
船の上で詩歌や音楽を楽しんだようですが、
江戸時代に入ると、庶民に月見の風習が広まったそうです。
庶民のお月見は、貴族のものと異なり、収穫を祝う意味合いが強くなりました。
秋の収穫を喜び、感謝するためにお供え物をしたようです。
ススキは、収穫されたお米の代わりに飾られるようになったと言われます。

満月にかかるススキの姿は、十五夜お月さんを描く絵の定番ですね。

ちなみに、秋のお月見の風習は、十五夜の一回だけではありません。
中秋の名月と言われる、十五夜は、中国から伝わったもので、
秋のちょうど真ん中の日のこと。
旧暦では8月15日です。
旧暦と新暦のずれがあり十五夜は、新暦では9月中旬から10月上旬の間にくるようになります。
そして、月の満ち欠けも約15日と一定ではないので、
十五夜と満月には1~2日のずれが生じることもあるのだとか。
そして、秋の夜長に楽しむお月見は、もう一つ、十三夜、というものがあります。
あえて満月を見ないところが日本人らしい十三夜は日本由来だそうです。
※2020年の十三夜は、10月29日。

ススキ

イネ科 (薄) オバナ(尾花)、カヤ(茅)とも呼ばれる。
全国的に分布し、道端から山野まで生える。
草丈が100~200cmになる。
8月ごろから茎の先に十数本に分かれた花穂をつけ、小花に芒(のぎ)を持つ。
芒とは、この穂の先端にある棘状の突起のこと。似た物にオギ(荻)があるが、オギには、芒がない。


秋の七草というものがあります。
万葉の時代、山上憶良が歌に詠んだものです。

萩が花 尾花葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝顔の花
                                 万葉集、山上憶良

ハギ、オバナ(ススキ)、クズ、ナデシコ、
オミナエシ、フジバカマ、アサガオ(キキョウとされる説とムクゲか、アサガオ、またはヒルガオとされる説もある。)

春の七草は食用として親しまれていますが、秋の七草はどうでしょう。

ススキやハギ、クズなどのように、里山の手入れがあまりされなくなった今でも、
その繁殖力でどこにでも見られるものもあれば、
カワラナデシコやキキョウ、フジバカマのように、
その絶滅が危惧される種もあります。

私が幼いころは、秋の彼岸には、
父がどこからかナデシコやオミナエシ、ツリガネニンジンの花などを採ってきて仏壇に供えたものです。
以前は、野山の土手で見かけたカワラナデシコは、
最近ではほとんど見ることがありあません。
それでも、何とか園芸屋さんで手に入れた、
園芸種のナデシコやキキョウ、フジバカマを庭に植えて秋の七草を楽しんでいます。

これらの秋の七草は、ほとんどが薬草なのです。
ハギ、ススキは、民間薬として
他の5種はちゃんと生薬名を持つ薬草として使われます。

ススキは、その昔、炭俵作りにも使われていたそうです。

私は、簾づくりの方法をまねて、小さな炭俵を作ってみました。

炭俵みに

短くカットした炭を丸って簡単に出来上がり。ちょっとした飾りになりますよ。
飾り棚にぜひ。炭による湿気取りの効果が期待できます。

秋が深まり、ススキの穂のふさふさの綿毛が
木枯らしで吹き飛ばされてしまった後の
すがれたすすきの穂を集めて、昔の人はほうきを作ったそうです。

私は、蜘蛛の巣取り用のほうきを作りました。

柄は、木肌が美しいブルーベリーの枝で。ちょっと長めにしました。

カヤ違いですが、同じ名前の夏の蚊帳(かや)の素材の布を合わせてみました。
この蚊帳も今ではほとんど使われていませんね。

susukiのほうき

このほうき、なかなか使えますよ。

五感で感じる和ハーブ

薬草だけが和ハーブではありません。

生活にはなくてはならない材料として、まさに有用植物だったススキ。

秋の夜空を眺めながら、
お月様への思いとともに、
ススキが必要とされていた時代の景色にも
思いを馳せてみたいものです。

草木あそび 9月

フウロソウの仲間
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ゲンノショウコは夏の季語だと聞きます。

この名前を初めて耳にしたのは、きっと中学生の頃。
祖母が語っていたのを思い出します。
「とてもいい薬になる・・・」と言っていた記憶があります。
名前以外の言葉をどのように発したのかは忘れてしまいましたが・・・。

庭先のあちこちで花をつけるこの花が
その「げんのしょうこ」だと改めて気づいたのは、2年ほど前のこと。
庭の手入れでそこで過ごす時間が長くなり、草むしりが板についてきた頃でした。

植えた覚えもないのに、夏の終わりにかわいい花を咲かせる。
今では、この花の居場所を作って大切に育てています。

げんのしょうこ

花の可憐さに加えて、その花後の姿にはジーっと見入ってしまいます。

その姿がお神輿に似ているのでミコシグサとも呼ばれるようです。

ゲンノショウコ種

茶色いとんがりが、花後の姿です。このとんがりの朔果の形がフウロソウの仲間の特徴です。その姿が鶴の嘴に似ていることから学名のGeraniumがつけられました。

とんがりは熟すとその果皮が勢いよく5つに裂け種が飛ばされます。
種が飛んだあとの姿が、お神輿に似ていることから、ミコシグサとも呼ばれます。

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なんとも愛嬌のある姿です。

ゲンノショウコ  
現の証拠
フウロソウ科 フウロソウ属
別名 神輿草(ミコシグサ)、医者いらず(イシャイラズ)、たちまち草(タチマチグサ)
学名 Geranium thungergii
名前の由来は、読んで字のごとく薬として飲んですぐに効く、現実の証拠に早速効き目があることからその名がついた。
花は白花と赤花(ピンク)があり、中部地方より東には白が多く、西には赤が多い。


日本で古くから民間医療の薬草として、多く使われてきました。

ドクダミ、センブリと並んで「日本三大和薬」の一つですが、
漢方薬としては、ほとんど処方されることがないそうです。

現在の薬局方の「専ら医薬品」に収載されているということで、認可がないものはこの植物の売買はできません。

それほど、信頼のおける薬効を持つゲンノショウコの主成分は、加水分解性タンニン。
その葉をお湯にさっと浸すと便秘と下痢に効き、長く煎じると整腸作用も加わって
「お腹の万能特効薬」となります。
更に、利尿作用はもちろん、免疫力を上げることが期待できるそうです。

かつて、山伏によってつくられた「陀羅尼助」 (修験道の聖地により、「百草丸」「大山煉熊丸」などの名前もある。)は、
日本史上、最もヒットした医薬品と言われていますが、
キハダを主な原料とし、センブリやホオノキに加えてゲンノショウコも配合されます。

夏の終わりの暑い日に、庭からとってきたゲンノショウコの若葉を天ぷらでいただくと、
ほろっとした苦みがあり、
冷たいもので疲れた胃に良いような気がします。

春の芽吹きの頃は、その葉が猛毒のトリガブトに似て区別が難しいので、
採取は7、8月の花が咲いた頃にするのが良いようです。

花のかわいらしさが、私にとって一番の魅力であるゲンノショウコですが、
先に記しましたようにフウロソウの仲間です。

学名のGeraniumは、最近日本ではゲラニウムと呼ばれ、
ガーデニング愛好者の間では、花の大きい西洋種のゲラニウムが人気です。
よく知られている植物にゼラニュームと呼ばれる植物があります。
そちらは同じフウロソウ科の仲間ですが、テンジクアオイ属(ぺラルゴ二ウム属)の花をそう呼んでいるようです。

最初の写真と同じ下の写真の中の、
左側のピンクの花は、外来種のゲラニウム。和名アケボノフウロソウ。
真ん中がゲンノショウコ。
右がゼラニューム。

フウロソウの仲間

同じフウロソウ科でも、ゼラニュームには、
ローズゼラニュームなど香りのよいものもあり、香りを楽しむハーブの一種として扱われます。

ちなみにフウロソウ科フウロソウ属の植物のである、ヒメフウロには臭いがあるようです。
塩を焼いたような臭いがするのでシオヤキ草とも呼ばれるそうです。

薬草の聖地、伊吹山では、ヒメフウロはゲンノショウコと同じように扱われるそうです。

ゲンノショウコは地味な花で、香りも際立つほどではありません。

そこで私は、薬草として楽しむ他に、どんな楽しみ方ができるかと考えたあげく、
まず、エディブルフラワーとして試すことにしました。
エディブルフラワーとしてですから、葉っぱではなく花をということです。
美しくお料理を飾って、そしていただく。

そこで、登場したのが梅干しのはちみつ漬けです。

昨年、立派な梅をお友達からいただいて漬けました。
見た目はふっくらでおいしそうにできたのですが、とてもしょっぱくなってしまいました。
少しずつテーブルに出してみるのですが、
テーブルを共にする家族の中でしょっぱいものを食べてもいいのは私だけ、
あとは塩分制限のある夫と母。
勧めるわけにもいかず。

ある時ふと思ったのです。
塩抜きということが梅干しにもできるかもと。
さっそくググってみましたよ。
ありました! 
親切なお料理の先輩たちが、いろんな情報を上げていてくれました。
早速一晩水につけて、翌日、天日で干してから、はちみつ漬けにしました。

おいしくできました。一日一個食べられます。

そんな、苦肉の策のはちみつ漬けの梅干しを、ゲンノショウコの花と葉で飾ってみました。
もちろん、お花もパックン。
苦みがあって、
甘酸っぱい梅干しを食べた後の、苦みはなかなかいい感じでした。

梅干しとゲンノショウコ

ゲンノショウコは、私にとってはやはり鑑賞の対象です。

フウロソウの仲間の蕾の姿はたまらなくかわいいです。

この仲間の多くは、花柄の先に1~2個の花をつけます。
ゲンノショウコは決まって2個。
その二つの小さな蕾が並んでうつむく姿がいじらしいです。
そして種をつけるまで二つ並んで一緒。

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茎を横に這わせて広がるゲンノショウコは、
他の花とも仲良しのようです。他の花の間から顔をのぞかせているのをよく見かけます。

種で簡単に増えますから、ぜひ皆さんもお庭にいかがでしょう。

西の方に多い赤花のゲンノショウコをいつか見たいと思っています。

ヒメフウロは、この辺りでも目にすることができます。
もともと在来種のヒメフウロは、伊吹山(滋賀県と岐阜県の境にある)や
四国の剣山など限られたところに生息していましたが、
園芸用に導入されたものがあちこちで繁殖しているそうです。
また、輸入の牧草などに交じって渡来した、
アメリカフウロやオランダフウロも同じ仲間です。
ゲンノショウコとの大きな違いはその葉の形、
ゲンノショウコの葉の切れ込みは浅いですが、
他のものは切れ込みが深いので見分けられます。

話はそれますが、
外来種の植物は、見るに珍しく、美しい花のものも多いので観賞用に重宝されます。
また、昆虫などにもありがちですが、
輸入された物に交じって日本に入ってきて、
このところの温暖化のせいか越冬が可能になり、
日本に住み着くという生物が少なくないようです。
いわゆる帰化した植物の中には、
かなりの勢いで繁殖しているものも少なくありません。
きれいなだけならいいのでしょうが、
一番困るのは、その繁殖力が日本の在来種の生存を脅かしてしまうこと。
地球上では、かなりの数の種の生物が日々絶滅しているといわれます。

例えば、秋のドライブで、遠くから見るときれいだなあと思うほど、一面に花を咲かせるセイタカアワダチソウ。
もしかしたら、そこ場所には昔、なでしこがピンク花を見せていたかもしれません。  

また、近頃は農業人口が減り、農地が荒れたままになるなど、
里山の手入れが十分にされなくなっています。
そのため、夏には植物がのび放題になる場所が多くなりました。
侵略的外来植物と言われるアレチウリ。
これが蔓を伸ばし木々を覆っている景色をよく目にします。
冬には枯れても、たくさんの種を結ぶこの植物は、
また翌年も芽を出し、野山を覆いつくします。
クズに覆われた野山もよく目にしますね。
このクズは、日本の在来種ですが、
アメリカに観賞用として渡り、今では野生化して、アメリカの野山も覆いくしているそうです。
アメリカにとっての侵略的外来生物ですね。

ちいさな種でも、大きな自然環境の変化に影響を及ぼしかけないのですよね。

そう考えると、庭で花を楽しむ際には、その花だけではなく、
種になってからも、ちゃんと管理できる範囲で育てなければならないなと、
最近強く思い自分に言い聞かせています。

日本の在来種で、古くから日本で薬草として使われているこのゲンノショウコですが、
その学名は、Geranium thunbergiiです。
日本原産の植物の学名にはjaponicaがつくことがよくありますが、これは違いますね。

カタカナで書くと、ゲラニウム・ツンベルギーでしょうか。

このツンベルギーという名は、
スウェーデンの医師であり、植物学者であった、Carl Peter Thunberg(カール・ピーター・ツンベルグ/カルル・ペーテル・トゥーンべり)の名前からとられています。
彼は、1775年にオランダ商館医として来日、
日本で植物を採取し、桂川甫周や中川淳庵らに、医学や植物学を教えたといわれる人物です。

ずーと国内で、大切にされて和名だけを持っていた植物が、
この頃から、学名を持つようになたのでしょうね。

ちょっとロマンを感じます。

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暑い夏も何とか過ぎていき、
太陽の日ざしが、斜めになるころゲンノショウコはその枝葉を伸ばし、
広がるように成長します。
庭仕事は、秋の花を楽しむ準備。
伸びきった枝の剪定や雑草取りをする季節。
ゲンノショウコもこの庭では、刈り取られる植物。
煎じ薬用に、全草を刈り取って水洗いし、小さくカットして、
一日天日干し、あとは陰干しで、4、5日かけて乾かします。
カラッとしたところでジップロックにシリカゲルと共に入れて保存します。

それでもまだあるゲンノショウコは、
枝を集めて作ったハンギングリースに他の植物と一緒にアレンジして部屋飾りとして楽しみます。
まだまだ残暑があるのであっという間に乾いてしまいますが、そのまましばらく飾っておきましょう。

華やかなバラのドライフラワーはあまり好みではありませんが、
楚々と枯れていく姿を見るのは、嫌いではありません。

時の移ろいを感じることができるから・・。

白い小さな花を咲かせるゲンノショウコ。
亡き祖母の、「ゲンノショウコはな・・・・・」
続きの言葉は思い出せないけど、
幼かった頃の空気を感じさせてくれる植物。

ずーと昔から私たち日本人の暮らしの中にあった植物。

忙しく流れる時間の中で、
その存在を知ることで、
ふと足を止めてみたくなるはずです。

足元の宝物。

和ハーブ
ゲンノショウコ

今ならまだ、そのかわいらしい花を見ることができますよ。
そしてひょうきんな「お神輿」の姿も。
身の回りの庭でぜひ探してみてくださいね。

参考文献 「和ハーブ にほんのたからもの」  古谷暢基/平川美鶴著
       「和ハーブ 図鑑」           古谷暢基/平川美鶴著


草木あそび ホオノキ

ホオバ花留め

ほおのき
「朴の木」と書く。
「朴」の意味は自然のまま、うわべを飾らない。すなお。樸と同じ意味。
例えば、素朴(そぼく)・朴訥(ぼくとつ)・純朴(じゅんぼく)に使われる漢字。
どこで覚えたのか忘れたけど見たことがあるこの漢字を、
改めて辞書で調べてみると、
実は知らない漢字だったと気づきました。

ホオバフレーム

ホオノキの名前の由来を見てみると・・
古く万葉のころには、ホオガシワと呼ばれていたそうです。
「本草和名(ほんぞうわみょう・918)」には、
保々加之波乃岐(ほほがしわのき)としての記述があるという。
ホホとは、冬芽の、ほほむ(含む)形から呼ばれたといわれます。
「ほほむ」をしらべてみると、
「中にはらんで待つ」や
「蕾が膨らんできたがまだ開かずにいる」の意味を持つとありました。
たしかに、ホオノキの葉が開く前の芽の形は独特の姿。

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中国に生息するこれに同じモクレン科の樹木で厚朴とよばれるものがあるようです。
この樹皮を採り乾燥させたものが厚朴という生薬。
日本原産のホオノキから作られたものは和厚朴と言われます。

さて、ここで改めて和ハーブと何か触れてみたいと思います。

その前に、ハーブとはどんなものでしょう。

英語のherb の語源は、ラテン語のherba(草=茎が木質化しない植物を意味する)に由来します。
いろんな解釈があるようですが、
広義の解釈として、「有用植物」全般を指すといえます。
草・木も含め、その葉・茎そして花・実・樹皮・根などすべての部位を含めたものと言えます。
また狭義では、「主に、飲食系や医療系に有用される、
香りや薬効が強い草本植物の葉・茎部分」と定義されることもあります。
ハーブと聞いて思い浮かぶのは後者ですよね。
ハーブティーや最近よく聞くフォークレメディ(民間医療)に用いられるイメージがありますね。

それでは「和ハーブ」とは何でしょうか。

上記の狭義のハーブの要素を持った日本の植物と連想される方も多いと思います。
例えばシソやワサビ、セリなど・・。
確かにそれらも一部含まれますが、「和のハーブ」という表現とは別もので、
「和ハーブ」は、
「一般社団法人和ハーブ協会」によって、定義されたオリジナルワードなのです。

その正式定義は、

① 日本原産の野生種および栽培種の有用植物。

② 外来の野生種および栽培種のうち、江戸時代以前より広く使われてきた有用植物。

の二つです。
ここで言われる「有用植物」ですが、
それは、薬効や食用のみに限らないというところを、特にお伝えしたいと思います。

下記は、食と民間薬以外の和ハーブの分類例です。

1.美容・化粧~ ベニバナ・ツバキ・ヘチマなど
2.入浴   ~ショウブ・セキショウ・ヨモギ・ユズなど
3.染料・色素~ アイ・ベニバナ・アカネなど
4.神事・生活行事~ サカキ・シキミ・タチバナなど
5.紙    ~ コウゾ・ミツマタなど
6.布・衣服 ~ アサ・カラムシなど
7.紐縄・敷物・履物 ~アサ・フジ・アケビなど
8.家財道具 ~ タケ・センダン・キリなど
9.器・盆・箸など~サクラ・ケヤキなど
10.建材   ~ヒノキ・スギなど
11.塗料   ~ウルシ・カキなど
12.玩具   ~(ナズナ・オオバコなど)
13.保存(包葉として)~カキ・カシワ・ホオノキなど
14.防虫・殺虫 ~キハダ・センダン-クスノキ
15.園芸  ~ウメ・カエデ・ボタンなど
16.洗剤・石鹸  ~サイカチ・ムクロジなど。

こんなにたくさんの用途で、植物たちがわたしたちの生活に有用されてきたということです。
植物由来のものがどれだけ現在の私たちにとって安全であり、
将来、未来に向けて安心して使っていけるものかは、
広く知られている通りです。
古くから伝わる知恵を知り、
私たちの現在の生活に上手に活かしていくことができたらいいですね。

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《 ホオノキ ≫ 
 他の呼び名  フーノキ  ホオガシワ  ホー
 生薬名    厚朴
 30mにも育つ高木
長さ20~30cmの卵型のやや厚くてかたい葉が枝先に集まって互生する。
5~6月に枝先に、やや黄味を帯びた白い花を上向きにつける。
その直径は約15cmほどある。
原始的な植物の代表ともいわれるマグノリア科の特徴である
厚みのある5枚の花弁の下に、
同じ色の5枚の苞がつき、
まるで10枚の花びらが重なり合っているように見える。
受粉後中央の花芯が大きく成長する。
種子は鳥により広く散布され、大木であることから群生することはない。
雑木林に大きな葉のホオノキが一本だけ立っているのを見ることができる。

ホオノキの樹皮には精油、マグノール、マグノクラリンなどが含まれていて、
胃腸の粘膜組織を引き締めるので、健胃、消化促進、腹痛、整腸、去痰、利尿薬として広く応用されます。

ほとんどの場合、厚朴は漢方薬として使われます。
漢方薬では、生薬が単体で用いられることはないようで、
何種類かの生薬を混ぜ合わせて用いられるそうです。

古来アイヌの人々は、花芯が果実となったものを乾燥させて茶材として用いたそうです。
ナギナタコウジュや、キハダと並び、日常茶の一つだったそうです。

 その木材もまた様々に利用されてきました。
生長が速く、しかもその材は緻密で軟らかく軽い、
また狂いやひび割れが少ない。
そのため、版木や家具材、製図版、刀鞘、下駄の歯、マッチの軸、鉛筆材から、
ピアノやオルガンの鍵盤までさまざまな用途に用いられてきました。
ホオノキの木炭の朴炭(ほおずみ)は、昔はあかすりに用いたり、鍋の焦げを落とすのに用いたといわれています。

この大きな葉は、古くから葉に食べ物を乗せる、
炊ぐ葉(かしぐは)、カシワとして日常的に用いられたといわれます。

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最も特徴的な大きなホオノキの葉、ホオバの日々の生活への取り入れ方を見てみましょう。

炊ぐ葉(炊はかしぐと読むのですね)が転じて平安の時代カシワと呼ばれたホオバは、
ご飯や餅などを青い葉で包み料理するのに用いられたそうです。

現在もまた、岐阜の飛騨の高山の朴葉味噌(ほおばみそ)や朴葉寿司で知られていますね。

朴葉味噌はネギなどの薬味、シイタケなどの山菜・キノコをみそに絡め、
乾燥させた朴葉の上で焼いたものです。
最近ではお料理を研究する方たちによって、色々にアレンジされているようです。
香ばしい匂いを想像すると、ご飯が食べたくなりますね。
これは、ホオバの香りの良さはもちろん、
それが水をはじき燃えにくい性質を利用しています。

また、朴葉寿司は、ホオバの防腐効果が食べ物を傷みにくくすることから、
寿司やご飯、餅などを包むのによく使われてきたようです。

東北地方のマタギ文化では、
狩猟で仕留めた獲物の肉を数枚の朴葉で包み、
山中から持ち帰る習慣があるそうです。

葉に含まれる芳香成分に殺菌・防腐作用があることを、
彼らは、経験から知っていたのですね。
ホオバには食中毒の原因の一つの黄色ブドウ球菌に対して抗菌作用があるそうです。

 食の材料として用いるのであれば、
5~6月の花の咲く時期が適期。
香りもよく、硬すぎずに扱いやすい。
この時期に採取したものを冷蔵しておけばいつでも使うことができます。

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私は、先日みなさんと、ホオバ包みのおこわ作りにチャレンジしてみました。
おこわの具には。乾燥させたドクダミとお揚げを入れました。
作り方は、中華ちまきの作り方で。
ドクダミの香りと、ホオバの香りがマッチして、大人の風味の一品になりました。
不溶性の食物繊維が豊富なドクダミは、
宿便を取り除いて、新陳代謝を高めてくれます。
いつもの食卓にもドクダミご飯お勧めです。
そしてみなで楽しくひと手間加えられるホオバ包み、みんなが集まる食事にお勧めです。
・・・・集まれないのが残念ですが・・。

甘いもの好きの私は、ホオバ餅も大好きです。

市販の団子粉とあんこで簡単に作れます。
ホオバ皿

そして、作るのは今一つ自信がないという方も、
このホオバを使えば、市販のお菓子も、特別なものに見えてきます。

ホオバののホオは包む意味もあります。

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段ボールを四角くカットしたものを何枚か重ねて、
ホオバで包んで乾燥させて、
秋から冬を飾るオブジェとしてもかわいいものです。
赤いリボンを結べば、クリスマスツリーのオーナメントにもなりますね。

ホオバブーケ

そして、特大サイズのホオバは、お花のラッピングにもいい感じです。
色あせたあじさいなら、季節によってはそのまま置いてドライフラワーにして長くしめます。

ずーと昔から私たちの日常生活に有用されてきた
多種多様の植物たち。
その特性を知り、
ちょっとした場面に気軽に取り入れることによって、
自然と共にある豊かな暮らしの一コマを体験できそうですね。

見る、触る、香る・・・

日々慣れてしまったものには感度が鈍ってきます。

身近にある豊かなものたちの存在に気付くと、
自分の中の何かが動くのを感じます。

五感で感じる和ハーブのこと・・・

また一つ、忘れていた価値を見つけだしてみませんか?

草木あそび 7月

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ドクダミ文字

花だと思ってみれば真っ白でかわいい姿のドクダミ。

この根が勢い良く伸びて庭じゅうにはびこってしまう雑草とみれば戦わずにはいられない。

根元をもってギュッと垂直に引きぬくと、スポっと、深いところから抜けて気持ちがいい。
除草作業開始のころは、「まあこんな匂いも悪くないかも・・・」なんて余裕。
しかし、かがみこんでしばらくやっているとかなりの匂い。
時間がたつと充満してきたその匂いでそのまま気絶してしまいそうになる。

和ハーブをもっと生活に取り入れようと心がけ始めてからは、
庭にドクダミ許可の場所を作ってちゃんと育てている。

八重のかわいい品種もあるので、そこは格別に大切にしている。

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ドクダミのこと

ドクダミ(蕺草)  別名 どくだめ 地獄蕎麦 へぐさ 魚醒草(ぎょせいそう)など

生薬名 十薬(じゅうやく) 

学名 Houttuynia cordata   

洋名 フィッシュミント フィッシュハーブ ハートリーフ カメレオンプラントほか

ドクダミ科ドクダミ属の多年草 北海道南部から、本州、四国、九州に分布
冬季以外の時期いつでも見られる。成長期は春から夏。5~6月に花をつけ始める。

ドクダミノ

ドクダミの名は、毒をためるという意味からくるという説や、毒を出すに由来するの節もある。
平安時代の和薬辞典「本草和名」では「之布岐:しぶき」とある。
ドクダミの周辺に臭いが漂うことから「毒渋き」に由来する。

生薬名の「十薬」は江戸時代の「大和本草」の中に、
「馬に用いると十の効き目がある」とある。
名前に「どく」がつくが、いわゆる人に有害となる毒は持たない。


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また、洋名も様々で、フィッシュミントのように
この匂いを魚の生臭さにたとえているものもあります。
葉っぱの形からのハートリーフはいい名前ですね。
この植物に対して好意的に響きます。
その葉が色を変えることからカメレオンプランツとも呼ばれています。
これらの洋名に比べてなんて和名のやさしさのない名前。
強すぎるものを良しとはしない日本人らしいネーミングだなと思ったりします。

洋名ではもう一つ「lizard tail」 トカゲのしっぽというのもあります。
これは、その花の中心に飛び出た柱の部分をトカゲしっぽのように見てつけられたのでしょう。
ところで、ドクダミに花は白いと思っている方も多いはず。
しかし、白い花びらに見える部分は葉が変化した苞と呼ばれるもの。
花は、花芯に見える部分に細かい花が集まっているのです。
といっても花びらもガクもない雄しべと雌しべだけの花。
正常な生殖ができないドクダミは花粉を必要とせず、
クローンの種子を作るのだそうです。
その繁殖力の強さは根の分裂とこの種によるものなのですね。

仏教伝来とともに大陸から導入された中国伝統医学(中医学)に、
日本のオリジナルの要素が加味されて、
江戸時代に確立されたといわれるのが漢方です。

中医学を基本要素としている漢方が庶民には敷居が高いものだった時代に、
庶民たちは身の回りにあるものを研究、工夫し有用し、
体調不良や病気・ケガに対処しました。
いわゆる民間療法です。

古来より日本で行われ育まれた、庶民の健康や医療における知恵や情報は、
「和方」と呼ばれます。
そしてその主役は「和薬」と呼ばれる植物素材であり、
日本の自然に生息する数々の薬草たちでした。
和方は、漢方のように系統立てされていないそうです。
和方の知恵は、地域独自の伝統や経験に基づいているものです。
この和方を代表する和薬が「日本六大和薬」と呼ばれるものです。

ゲンノショウコ
センブリ
カキドオシ
タラノキ
ドクダミ
ウラジロガシ  の6種です。

その中でも、ドクダミはゲンノショウコ・センブリとならび
日本三大薬草と称されるほどその名と効用が知られている植物です。

ドクダミインバスケット

薬草としてのドクダミの効能を見てみると、
まず、生葉を用いて局所作用として、化膿やかぶれに効果を発揮します。
局所作用というのは、直接患部に当てて、皮膚に吸収されてその部分で効果を表すということです。

ドクダミのこの効用は、
あの臭気がその効果の元なのです。
ドクダミの匂い(悪臭と表現されることもある)は、
デカノイルアセトアルデヒドやラウリルアルデヒドと呼ばれる成分のためです。

この臭気成分が強い殺菌作用を持ち、
化膿やかぶれ、真菌が原因の皮膚疾患(水虫やたむし)に有効とされています。
この臭気は揮発成分で乾燥するとその効能と共に消えてしまうといわれます。

体内に取り込んだ場合の効能はどうでしょう。

ドクダミを食する文化が東南アジアにあるそうです。
ベトナムでは一般的な食用ハーブとして、生春巻きや魚料理に使われるそうです。

日本では、山菜好きの方が天ぷらで食するお話を聞いたことがありますが、
好き好きはあるでしょうね。

ドクダミ茶はよく聞きますよね。
乾燥させたドクダミはあの特有のにおいがなくなり、
ハーブティーとして楽しむこともできます。

クエルシトリンというフラボノイド類の物質を多く含むことから、
よく言われるのは抗酸化作用です。
他に解毒、むくみ解消、利尿や便秘改善などの緩下作用が期待できます。

dokudaminorenn.jpg

そして、ある報告によると、
乾燥したドクダミには消臭効果のあるコーヒー酸を含むということが報告されています。

ドクダミの生の葉でも、消臭効果があるとも言われていますよね。

私は、ドクダミ暖簾を作りました。

もちろん消臭効果を期待していますが、
洋名でハートリーフとも呼ばれるドクダミの姿はかわいらしいものです。
また、いづれドクダミ茶にと乾燥させるにも、
現代の住宅事情やドクダミの季節が梅雨の頃であることも考えると、
こんなふうに暖簾にして乾燥させるのもおもしろいでしょう? 

これは、私が小学生の頃の同級生のうちがたばこ農家で、
そこに遊びに行くとお手伝いさせてもらった
たばこハサミの方法からの発想です。

やはり自分で体験しないと信じることができませんよね。

まずペット臭の消臭を期待して、
愛犬ぽちこのスペースがあり、かなり動物臭が気になる部屋につるしてみました。
なんか効果があるのかも!! 
昨日までひどかったあの鼻につく動物の臭いが感じない。
いやいやお天気のせいかな。
昨日の真夏並みの気温に比べ今日は気温が一機に下がっているからねえ・・・・
と、数字が出せない実験結果は、感想しか言ええませんが・・。

それでも、このドクダミ暖簾はお金をかけずに、
庭の厄介者で作れるのですから、お試しして損はないですよね。

もっと簡単に試すなら、
スマッジ風にドクダミを束ねて転がしておくだけ。
どこにでもおけます。
もちろん冷蔵庫の中、シューズケースの中にもいいですね。

ドクダミスマッジ

和ハーブ暮らしの楽しさというのは、
実はそんな「実験」ともいえる
日々の手わすら (ちなみに「手わすら」は福島県や北関東の方言らしい) の楽しみです。

たとえ物の本に書いてあったことや、
人づてに聞いたことでもやっぱり体験しないと受け入れることはできないですよね。

そこでまず、自分で試す。
もっと新しい事実はないかとか、
現代の生活にいい感じで取り入れる方法はないかと
いろんなことをやってみる。

科学的な実験はできなくても、
自分で体感できることはいろいろある。 
観察して、
臭いをかいでみて、
いろんな調理の仕方で味見して、
お茶にして飲んでみて、
肌につけてみて、
周りの仲間の経験に耳を向け、
そして、ずーっと昔の日本の人々の暮らしに思いをはせて・・・。

五感で感じる和ハーブ暮らしは、
「キッチンラボから始まる楽しみ」 でもあるのです。

参考文献
 「和ハーブにほんのたからもの」 及び 「和ハーブ図鑑」  一般社団法人和ハーブ協会編
 「日本家政学会誌 報文」 2010年 vol.61 No.12


草木あそび 6月

かきどおしの小さなリース

06_kakidoshi3.jpg

 穀雨を迎えたころから、この里山で日曜日の朝に聞こえてくるのは草刈り機の音。
私にとってカキドオシのにおいは草刈のにおい。
その匂いは、小さいころ祖母の草刈についていったことを思い出させてくれます。
白い大きな兔を飼っていました。兔に食べさせる草を刈りにいく祖母についていったように覚えています。
緑がキラキラしていた季節・・・・・。

 もう少し大きくなってからの記憶では、祖母が口にした植物の名前や薬効の話、そして何やら植物を集めたり、干したりしている姿が浮かんできます。
当時は、多くの人たちが身近な薬用植物をあれこれ集めて、アルコール漬けしたり、乾燥させたりして日々の暮らしに生かしていたようです。

カキドオシのこと

カキドオシ (垣通)   別名 カントリソウ    生薬名 連銭草
学名   Glechoma hederacea subsp.grandis   洋名 グレコマ
シソ科カキドオシ属  全国的に分布
垣根を通して隣まで入り込むことから垣通と名付けられた。
春先に紫の花をつける。半円形のギザギザの縁取りのある葉が茎に対生する。
花が終わると茎が伸びて蔓状になり地を這って伸びる。生薬名は、その葉と茎の姿に由来。
ミントとバジルの中間のような香り。子供の疳の虫に効くことからカントリソウとも呼ばれる。

古来より民間薬として使用されてきた日本六大和薬の一つに数えられる。
血糖値上昇抑制、利尿、消炎作用、子供の疳の虫に効くとされる。

特に血糖値降下作用が認められ、古くから糖尿病対策やダイエット和ハーブとして有用されている。
その効用は1968年の日本薬学会の動物実験によって確認されている。
また、2007年の日本食品科学工学会の実験でも同様な結果が報告されていて、
これはサポニン成分のウルソール酸などが、糖分の胃腸内の滞留時間に影響を及ぼしていると考えられている。
(和ハーブ図鑑 一般社団法人和ハーブ協会編参考)


半日陰で育つ開花前の葉が、香り豊かであくも少なくお料理に用いるのに向いています。
通常、花の終わりころ先端にまだ花がついている頃が採取時期と言われます。
お茶として使用するなら、よく洗い細かくカットしてからざるなどに紙を敷いて広げて干します。
一週間を待たずにカラッと乾きますので、瓶や袋に入れて保存します。
食用、飲用にする場合には、採取場所に気を配り、必ず採取後の選別をしっかりすることはどの和ハーブも同じです。

かきどおし干し

薬効を期待するのであれば、毎朝、400㏄程度の水に乾燥させたかきどおしを15g程度入れ、半量まで煎じて、一日3回に分けて飲むとよいとされます。苦みがあるので子供には、甘茶とブレンドしてお茶のようにして入れると飲みやすいです。
フレッシュ和ハーブティーとして香りを楽しむこともできます。
半日陰で摘んだ柔らかい葉を適量(少しでも香りがします)入れて熱湯を注ぎ、好みの時間で抽出します。

kakidoosi.jpg

和ハーブティーを楽しむためのガラスのポットとカップを用意するとその美しい緑色も楽しめますね。

 カントリソウの別名を持つかきどおしは、子供の枕にいれたそうです。

私もかきどおしのサシェを作ってみました。箪笥の奥から出てきた子供の頃寝間着として母が作ってくれたネル地の着物。
思い切って袖の部分の生地を使って、かわいいハート型にして孫のために。
中に綿を緩く詰めて、そこへ干したカキドオシを詰めました。
ミシンでダダダダーッとハート形を3周ほどステッチ。
あまり手をかけすぎないのは使い捨てしてもらえるように。
香りがなくなったらおしまい。虫がわいても困りますしね。

再生させて生かすものと、処理するものはきっぱりしないとね!

これを枕もとに置いて、夜ぐっすり眠ってもらえるかしら。

かきどおしのサシェ

 見た目がかわいらしいカキドオシは、洋種の斑入りの種もあり、グレコマの名で園芸用とし流通しています。
もちろん、ヨーロッパでもグレコマはハーブとして扱われるようです。
その繁殖力は強く、茎の節から根を出しどんどん伸びて広がります。
根は浅く細いので園芸用としても管理しやすい植物のように思われます。

グレコマ

蔓状に伸びてきたところをカットし、小さな瓶に節が水につくように挿して飾りましょう。しばらくすると根が出てきます。
そしたら、それを苔玉にしてみるのもいいですね。

かきどおしで草木あそび

 かわいらしい紫の花を集めて、ひと時だけ楽しむのも、繁殖力が強いカキドオシだから躊躇なくできること。
お気に入りのお皿やかごにふんわり盛ってお茶のテーブルに。

かきどおしの花

蔓が伸びてきたら、その蔓で草木あそび
蔓を丸めて何ができるかしら・・・
あれこれ試行錯誤の時に、ふわっと漂うかきどおしの匂い。
香りと手仕事で癒しの時間が過ごせますよ。

くるくる丸めてスマッジ風にまとめてみたり。
リースにしてみたり。
決まった形に仕上がらなくても楽しいものです。

かきどおしのスマッジ

 ぜひこれは、小さな子供たちと楽しんでほしいこと。
匂いの記憶は脳の奥深く残るはずです。
大人になってから、なつかしい匂いに出会った時によみがえる子供の頃の記憶。

和ハーブ かきどおしの、現代の役どころはそんなところにあるのかなと思うのです。

便利な暮らしが主流の現代。
和ハーブの知識を持ち、それを摘んで、処理して生活に取り入れることができる環境にいる方はどれだけいるでしょう。

もちろん、それができる方には、和ハーブのある暮らしをしてほしい。

それができない人たちには、いつもの散歩道や、休日に訪ねた公園の片隅でこのかきどおしをみつけたら、手で触れてほしい。
可能なら手折って匂いを嗅いでほしい。

( ※引き抜いてはダメですよ。野生の植物を採取するときは、根を残すのが基本です。
もちろん、管理者に断る必要があれば一声かけてくださいね。きっとダメとは言われないはず。
かきどおしは雑草として扱われるのが常ですから。)

かきどおしを手に取って、その茎を絡めて引っ張りっこでもいいのです。
遊びながら、教えてあげてください。
「これは、薬草の一つなのだよ。日本人はずっと昔から、身近な植物を使って病気から身を守っていたのだよ。」と。

先人の知恵の一片でも子供たちに伝えてほしいと思うのです。

かきどおしの香りの中で遊んだ記憶はきっとずっと残るはず。

懐かしい匂いかいだときに、、
紐で手繰り寄せるように次々とよみがえる記憶。
それは幼かったころ自分の周りにいた知恵ある大人たちとの思い出。

この思い出はきっと、「人はつながっているのだ。」ということも感じさせてくれると信じています。

かきどおし、連銭草・・・・つながることを名に持つ和ハーブです。

かきどおしのハート型サシェ

題字 石井睦子氏
参考文献
和ハーブにほんのたからもの 古谷暢基 / 平川美鶴 著  
和ハーブ図鑑     古谷暢基 / 平川美鶴 著  一般社団法人和ハーブ協会編
プロフィール

 つむらやしのぶ

Author: つむらやしのぶ
福島の小さな村に暮らしています
庭づくりをしながら花仕事
和ハーブのある暮らし楽しんでます
和ハーブインストラクター
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